京都ラーメンの源流・定番・定義とはなにかについて


京都ラーメンの源流・定番・定義とはなにかについて

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まえがき


この記事は京都ラーメンの源流・定番・定義とはなにかについて書いた資料です。

源流は京都ラーメンの歴史を紐解くと屋台から始まり「元祖京都系」として京都駅の東側「たかばし付近」で今も営業している豚出汁のスープで食べる「新福菜館」や「第一旭本店」が源流と言えます。また「第二の京都系」として北白川発祥の鶏ガラ出汁のスープで食べる背脂醤油(背脂チャッチャ系)「ますたに・ほそかわ」も源流と言えます。

定番は前述した4店舗「新福菜館・第一旭本店・ますたに・ほそかわ」に加え「第三の京都系」と呼ばれる「天下一品」も加えることができます。天下一品は鶏ガラと11種類の野菜が溶け込んだ濃厚スープを1990年代から全国にFC展開しているため京都在住以外の方には京都ラーメンの定番といえば「天下一品」を思い浮かぶ方もいることでしょう。

こうした源流・定番のお店を見ると、京都ラーメンは「薄味とかあっさり」と思われているのが間違いであることがわかります。どのお店も醤油ダレは香ばしい香りがしますし出汁は濃厚でこってりを感じるお店です。しかし、醤油辛さを感じさせないラーメンなので関東のように醤油味に慣れた方からすれば「薄味」に感じるはずです。実際、私も東京から京都に移住してきた時には京都ラーメンの味の薄さをブログに書いています。

あとは京都以外で「京風らーめん」を名乗るお店(例:あかさたな)などがあったことも「薄味とかあっさり」と思われている理由でしょう。

京都人は濃い味も好きだが脂が濃いとか醤油が濃いではなく「旨味」があるものを「味が濃い」と考えていると京都の食べ物を食べ歩いていると感じます。

関西は出汁文化ですし、京都では食材に色をつけない和食文化が根付いているため「味が濃い=醤油などの味が濃い」ではなく「旨味が濃い=味が濃い」と考えるのではないでしょうか。

今回は京都在住の方でも、そうでない方でも分かりやすいように「京都ラーメンの源流・定番・定義とはなにかについて」まとめました。

<参考資料>
書籍『京都ラーメン物語(京都新聞出版センター)』2002年12月16日初版。
書籍『ほんとにおいしい京都の100ラーメン。(Leaf Mook)』2003年12月12日初版。
書籍『記憶に残る80杯 京都ラーメンはカルチャーだ。(京都新聞出版センター)』2007年11月9日初版。
サイト『京都ラーメン学』https://kyotocf.com/ramenuntiku/

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京都ラーメンについて


京都最古「新福菜館」のラーメン

京都最古「新福菜館」のラーメン

京都ラーメンは豚か鶏の出汁(清湯)に醤油辛くなくキレあり香ばしさを感じる醤油ダレを合わせたスープが特徴的なラーメンです。

地域別にみれば、京都市北部は鶏ガラスープのお店が多く、南部は豚骨や豚出汁スープが主流です。北は「ますたに」の系譜、南は「新福菜館・第一旭・ラーメン藤」といった近藤製麺工場(近藤食品)の食材を使用するラーメン店の影響が強く出ています。

鶏ガラスープのお店では背脂を浮かせているお店が老舗では多くみられます。北白川発祥の「ますたに」がその源流(発祥)と言われています。

麺を啜った感じでは中細ストレート麺もしくは中太ストレート麺を使用(熟成麺を使うこともある)しています。パツンとしたキレとコシがある麺が好まれているようです。

製麺所は「近藤製麺工場(近藤食品)・中金製麺所・麺屋棣鄂(瑞穂食品工業)」がよくつかわれています。他にも「宝産業(京都市伏見区の「釧路製麺」、2024年5月から吉野家ホールディングス傘下)」や大阪の「太陽製麺」を使用している場合もあります。北白川の「ますたに」は「福建(製麺所)」を使うなどお店によっては聞きなれない製麺所になっていることもあります。

トッピング九条ネギが使われているのが特徴的です。ラーメン横綱など一部九条ネギを使用していないお店もありますが、京都では江戸時代から日常的に食されてきたのが九条ネギです。そのため、京都のラーメンは九条ネギに合うスープが好まれているようです。

ラーメン鉢の下に受け皿を敷いて出す店も多いです。これは屋台ラーメンの名残で、屋台はテーブルが傾いていたり安定していないことが多く受け皿を敷いて出していたからです。

元祖京都系


第一旭(豚骨醤油)

第一旭(豚骨醤油)

前述のように京都市南部で食べられているラーメンは豚骨スープが主流です。

第一旭本店(1956年創業 *1)や新福菜館(1945年創業 *2)にラーメン藤本店(1972年創業)はサラっとして透明感があるスープが特徴的なラーメンです。新福菜館は色味が黒く濃い味に見えるが辛くはありません。

京都では新福菜館が京都最古のラーメン店として愛され今も営業していますが、これらのラーメンの特色を見ると京都では醤油辛いのではなくキレのある醤油で醤油本来の風味がシッカリとしているのが好まれているのがわかります。

理由は九条ネギを使うからとされています。京野菜の九条ネギは日常食で江戸時代から食されてきた伝統野菜です。秋深まる頃から冬の始まりの九条ネギは霜により独特の甘さがでます。そのネギを美味しく食べるために醤油辛さは望まれていないとされています。

出汁*3)が使われていてスープは臭みを感じます。京都では「獣臭」と呼ばれることがありますが、清湯で獣臭を感じるラーメンに関東のラーメン店主が驚くこともあります。なぜなら、一般的にはこの臭みを取り除くことで美味しさを追求するのがラーメンだからです。

(*1) 旭食堂として1947年創業、第一旭の看板でラーメン専門店になったのは1956年。他に1953年創業(書籍「京都のラーメンはカルチャーだ。」P126に記載)や1957年創業(書籍「京都ラーメン物語」P100に記載)との記録がある。過去に経営者が何度か変わって屋号はその時によって多少異なるがここでは「第一旭本店」で統一した。
(*2)1938年屋台で開業、中国浙江省出身の徐永俤氏と妻の文子さんが漆黒スープのラーメン屋台を京都駅近くで始めたのが最初。1944年に京都駅東の塩⼩路⾼倉に店舗を構え「新福菜館」となる。創業年は1945年という記録もある(書籍「京都のラーメンはカルチャーだ。」P124と(書籍「京都ラーメン物語」P98に記載)に記載)。現在の場所になったのは1947年のようで本家第一旭本店を開業する田口氏に今の場所を借りた。昭和40年代には二代目の山内勝さんに店主は変わった(その後の経緯は不明)。直営店は「府立医大前店」で他は暖簾分け。
(*3)スープのベースについて。第一旭は「豚骨・豚肉・玉ねぎベース」、新福菜館は「鶏ガラ・豚骨・背脂・腹脂」、ラーメン藤本店は「豚モモ肉と背脂」である。

第二の京都系


ますたに(鶏ガラ背脂醤油)

ますたに(鶏ガラ背脂醤油)

背脂も甘味と旨味がある食材として京都市北部(北白川界隈)でよく食べられている食材です。背脂が浮かんだラーメンを京都では「背脂醤油(背脂チャッチャ系)」と呼んでいます。スープと一緒に煮込まれている背脂をスープが盛られたラーメン丼に平ザルでチャッチャと背脂をかけることからそう呼ばれています。

この背脂も京都のラーメンスープと九条ネギと相性が良く、ますたに(1949年創業)・ほそかわ(1983年創業 *4)などが第二の京都系として背脂醤油ラーメンのお店として知られています。

背脂は九州とんこつのような濃厚なスープに入れると脂っこいだけですが京都のアッサリとしたスープにはよく合っています。これを「こっさり」と表現することもあります。

背脂はA脂(B脂のワンランク上の背脂)を絞り切って出すこともあります(脂っこさが抜ける)。また、くどくない程度で表面に浮かべるお店が多くあります。背脂は少ないと物足りないし、多すぎるとしつこくなるので背脂の分量は京都ラーメンでは大事な要素のひとつとなっているとも言えます。

出汁鶏ガラが使われていてスープは臭みを感じます(*5)。京都では「獣臭」と呼ばれることがありますが、背脂が多めに浮かんでいるため豚骨を使っていると思われることもしばしばあります。清湯で獣臭を感じるスープを関東のラーメン店主などが食べると結構驚くのも面白いです。普通はこの臭みを取り除くことにラーメン店主は苦心しますが京都では臭みも食材本来の風味なのです。

ますたにのスープには一味も使われていてアクセントになっています。京都では七味屋が神社の鳥居の脇で営業してきた文化が今でも残っていますが京都らしさを感じる隠し味です。

*4)ほそかわはますたにで修業した弟子が開業。
*5)鶏ガラに豚骨を加えた「山さん(滋賀に移転)」と「いいちょ(山さんで修業)」も背脂チャッチャ系。山さんは岩倉の「⻁⾓」で修業した方のお店。

第三の京都系はこってり


天下一品(こってり鶏ガラ野菜)

天下一品(こってり鶏ガラ野菜)

京都のラーメンは意外とこってりと全国に広めたのが京都発祥のラーメンチェーン「天下一品(1971年創業 *6)」です。京都では「天一(てんいち)」と呼ばれていて支店が京都中にあります。

とろみを超えたドロっとしたスープが特徴的で鶏ガラと11種類の野菜が溶け込んだ濃厚スープで食べるラーメンです。

この天下一品もこってりは脂っこさではなくスープの濃度のことを言うのが京都ラーメンらしい点です。コクは感じるが味付けはアッサリと出汁本来の風味を味わう京都ラーメンの本質がわかる一杯になっています。でも、なぜか京都ではラーメンというよりも「天一という食べ物」と思われているのが面白いところです。

*6)1971年に北白川の現在の場所に屋台とテント営業で創業(当時は石材店の石置き場だった)。1975年に天下一品1号店として店舗となった。旧名称は「北白川本店」。1990年代に全国へFC展開を始めるにあたり瀬田工場をセントラルキッチンとしているため味はどこも同じ。

その他の京都系


天天有(その他の京都系)

天天有(その他の京都系)

京都の代表的なラーメン店は「新福菜館・第一旭・ますたに・天下一品」で間違いありませんが、他にも京都ラーメンの歴史の中で今でも愛されるラーメン店が多く存在します。

例として「中華そば高安(1998年創業)・中華そば専門店 珍遊(1997年創業)・天天有(1971年創業)」は一乗寺ラーメン街道では老舗と言えるラーメン店です。

中華そば高安はトロっとした豚骨の白湯ラーメンで甘みのある美味しいラーメンが若者にウケています。

中華そば専門店 珍遊は鶏ガラスープの背脂チャッチャ系。いわゆる北白川系なので後味アッサリでしたが、ここ数年前から味に変化が見られる気がします(個人的には美味しくなったと思う)。

天天有は京都ラーメンでは他のどのジャンルにも属さない独特なスープが特徴で、鶏ガラと野菜だけでつくられる半透明の白湯スープはコンポタのような甘さを感じます。味付けはアッサリなのにスープに旨味があるのが京都ラーメンらしい点です。

サイドメニューは焼飯と唐揚げ


サイドメニューの定番「焼飯」

サイドメニューの定番「焼飯」

京都の老舗ラーメン店ではラーメンと一緒に注文するサイドメニューには必ずと言って良いほど「焼飯(やきめし)」があります。ご飯に青ネギや玉子に焼豚を具材に濃いめの醤油(ラーメンの醤油ダレ)で味付けした焼いたご飯のことです。

焼飯は中華料理らしい炒飯とはまた異なる関西独自の食べ物と言えます。

ただ、最近のラーメン店では焼飯を置かないところも多いようです。焼飯は昭和40年代に新福菜館で提供されたのが最初とされています。

ラーメン店のサイドメニューに唐揚げがあるのは京都に来て初めて見ました。唐揚げにはマヨネーズを付けて食べているのも珍しかったです。関東ではラーメンのサイドメニューといえば「餃子」ですが、逆に京都ラーメン店で餃子を提供しているお店は少なく感じました。京都では安く餃子を提供する「餃子の王将」があり、私が京都移住した時はひと皿で200円より安く驚いたことがあります(東京では当時でも300円は普通)。そのため、ラーメン店で餃子を提供するのが難しい(王将に勝てない)のではないかと勝手に考察しています。

あとがき


私が京都に移住したのが2010年頃のことです。それまでは東京生まれの東京育ちで40年は関東近郊で生活していました。

東京都大田区の平和島に住んでいた中学生~高校生時代には家のすぐ近くにラーメンショップがあり週3日は食べに行っていました。また、家系ラーメンブームもあり環七沿いなどで家系ラーメンを好んで食べていました。

ですが、京都とのつながりは幼少期からです。

母方が京都出身で幼稚園に入る前から京都には何度となく連れられて来ていました。小学生の時には夏休みと冬休みはひとりで京都に新幹線でやってきては親せきの家に一か月ほど住んでいました。母方が神社だったので夏と冬(正月)は母もずっと京都でお手伝いをしていたことが理由です。

そのころから放浪癖があり北は東北から南は中国地方(本土)まで列車でひとり旅をすることも多くて、京都に来た時は京都を離れてひとりで岡山とか広島に島根とか鳥取まで行っていました。

昭和50年頃のことですが、京都駅はまだ古い駅舎で新幹線で到着すると市電に乗り換えて親せきの家まで行っていました。八坂神社とか熊野神社を社内から見ていた記憶があります。車両の最後部にデッキのようなものがあった記憶もあります。

市電は昭和53年に全路線廃止されたのですが、それまでは京都市内の移動はこの路面電車が当たり前でした。もっと小さい頃は北野白梅町にも路面電車が走っていた記憶がありますが、明確に覚えているのは昭和50年代初頭で市電が廃止される直前のことばかりです。

で、そのころから京都ラーメン「第一旭」を食べていました。

親せきの家近くにあったので皆で食べに行っていたからです。でも、今思えば正確には「元祖第一旭」のほうでフランチャイズ展開していた第一旭のほうですね(そのお店は今でも健在)。

小学生低学年から高校までは(1年で一か月ほど)京都で過ごすことが多かったのですが京都ラーメンは第一旭しか覚えていません。当時の印象は豚臭いでした(笑)

本格的に京都でラーメンを食べ始めたのは京都に移住してからです。

東京でもラーメン好きでよく食べていたので、京都に来てからも食べ歩くようになりました。

その頃には京都にも魚介を使ったラーメンや鶏豚だけにこだわらないラーメンも増えていましたが、塩と味噌ラーメンはまだまだ少なかったです。

小さい頃に見た京都も今ではだいぶ変わっていました。また、ラーメンもどんどん新しいお店が開業して意欲的なラーメンが生み出されています。そういったラーメンも京都ラーメンのひとつで今後の京都ラーメンの主流になるかもしれません。京都ラーメンがどんな発展をしていくのか楽しみです。

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京都のお墨付き!

京都の新しい飲食店や京都を紹介するブログ「京都のお墨付き!(osumituki.com)」は2013年から飲食新店情報や京都のお出かけ(街歩き)情報を10年以上記事にしている京都市在住「ノーディレイ」により運営されています。毎日の京都街歩きで見つけて掲載したグルメ(飲食新店)は3500軒以上(街ネタを含めると4700件以上)ある新店ハンターの先駆けです。特に京都のラーメン新店やカフェ新店の情報は掲載が速いことで知られています。X(旧Twitter)のフォロワーには京都の飲食店経営者やマスコミ関係者が多く京都のグルメ情報の情報源(一次ソース)ブログとも言われています。ブログ「京都のお墨付き!(osumituki.com)」が京都新聞で紹介されました

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