今回の「京都ラーメンブログ」は、京都で一番の有名ラーメン店「第一旭」について、あまり知られていない歴史をまとめました。以前も「第一旭」については詳細記事を書いていますが、今回はもっと分かりやすくした「第一旭まとめ」になります。
実は「第一旭は9系統ある」という事実はまだあまり知られていません。
※この記事は2017年6月19日に投稿したものですが、2024年2月に補足などを追加。さらに2024年9月に屋号の表記を分かりやすくまとめなおしてあります。
京都の老舗ラーメン店「第一旭」
今回は京都の老舗ラーメン店「第一旭」を簡単に短くわかりやすくまとめたいと思います
京都では「アキラ系」と呼ばれ、京都市内にチェーン店がたくさんあった「第一旭」のことです。
そして、一般的に「第一旭」と言われるラーメンは9系統あることはあまり知られていません。
京都の老舗ラーメン店「第一旭」のラーメンとは
さて、京都の老舗ラーメン店「第一旭」のラーメンとはどのようなものなのでしょうか。
簡単に言うと「豚骨ベースの醤油ラーメン」です。
ちなみに同じく京都の老舗ラーメン店「ますたに」のラーメンは「鶏ガラベース」です。
・第一旭(豚骨ベースの醤油ラーメン=豚骨醤油)
・ますたに(鶏ガラベースの醤油背脂チャチャ系)
主に豚骨醤油は京都市南部で食べられているメニューです。鶏ガラベースの醤油背脂チャチャ系は北白川を中心に京都市北部にお店が多く存在します。詳しくは私が書いた「京都ラーメンの南北問題」をご覧ください。
第一旭は京都の老舗ラーメン店のひとつなのか?
さて、ここから本題になってくるのですが、第一旭は京都の老舗ラーメン店のひとつなのでしょうか。
京都の古参ラーメン店と呼ばれる四大ラーメン店の創業年を調べると、第一旭が京都の老舗ラーメン店のひとつであるのは確実です。
・新福菜館(1938年に屋台、1945年に店舗)
・初代 珍遊(1940年代)
・第一旭(1947年)※1
・ますたに(1948年)※2
※1 第一旭の屋号は経営者が変わると屋号も変更される傾向にある。1947年「旭食堂」、1956年「第一旭」、1977年「京都たかばし本家 第一旭」、1986年二代目経営者・佃氏から「特製ラーメン 第一旭」、2002年頃三代目経営者・森田氏から「本家 第一旭」となる。三代目経営者から直営はJR京都駅近くの通称「たかばし」にある店舗のみとなったが後に東京の新宿店と神保町店がフランチャイズに参加し、2024年9月27日には京都・烏丸に直営2号店が開業した(直営2号店の実食レビュー)。
※2 Wikiではますたにの創業年は昭和22年(1947年)に屋台でスタート、昭和24年(1949年)に店舗販売スタートという老舗と記載。創業年についてはますたに 京都駅ビル拉麺小路店の看板には「昭和23年(1948年)創業」と書かれている。
「第一旭」と言われるラーメンは9系統ある
実は「第一旭」というラーメン店は京都の第一旭から派生した店舗が大まかに分けて9系統もあるのです。
これについては屋号をめぐる係争の資料を元に分類したのですが、本家は京都駅近く「高倉塩小路(通称:たかばし)」にある「本家 第一旭」で間違いありません。
・本家 第一旭(この屋号は三代目経営者から使用)
・本家 第一旭 たかばし 寺田店(二代目経営者の「特製ラーメン 第一旭」1号店だった店。現在は城陽に移転)
・その他全国に数多くある「特製ラーメン 第一旭」(チェーンからの独立残存店)
・たかばしラーメン(二代目経営者の「特製ラーメン 第一旭」のフランチャイズ店で10店舗ほどあった。現在はクーデションカンパニー株式会社が運営する「たかばしラーメン」となっている)
・総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭(京都府北部にあった二代目経営者の「特製ラーメン 第一旭」のフランチャイズ店)
・神戸ラーメン第一旭
・極上ラーメン第一旭(第一旭 六角店)※閉店
・元祖 第一旭(鳥取、現在の「大ちゃんラーメン」)
・本店 第一旭(愛知)
京都でよく見る第一旭は二代目経営者が全国にフランチャイズ展開した「特製ラーメン 第一旭(運営は株式会社 第一旭)」ですが、1997年(平成9年)に倒産しており、現在ではチェーンの残存店は独立採算店舗もしくは別チェーンとして営業しています。
そのフランチャイズの1号店(本店)は「本家 第一旭 たかばし 寺田店(後に移転し「本家 第一旭 たかばし 久津川」となる)」ですが、日本全国にフランチャイズ展開した店舗の多くはフランチャイズを運営していた会社「株式会社 第一旭」が倒産すると「特製ラーメン 第一旭」の看板のまま独立採算店になっている事例がほとんどです。
フランチャイズに参加していた別会社の中には屋号を「たかばしラーメン」や「総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭」に変更して生き残っています。
また「神戸ラーメン第一旭」とほぼ似たロゴマークの「極上ラーメン第一旭(第一旭 六角店)」という店舗もあります。
さらに鳥取と愛知に「第一旭」という店舗もあります。
これらのお店はどれをとっても同じ「第一旭」ではないのです。
※第一旭は9系統あると最初に書いたのは本記事ですが、本家第一旭本店の社長である森田孝祐氏も2023年5月に山陰放送のインタービューで第一旭は9系統あることを話しています(参考記事)。
本家 第一旭
京都ラーメンの雑誌などでよく紹介されているのが「本家 第一旭」です。
京都駅近く「高倉塩小路」にある朝から行列のできるお店のことです。
「第一旭」創業者である田口有司氏が1947年(昭和22年)に「大衆食堂 旭食堂」を開業したのがコノ場所で、1956年(昭和31年)に「第一旭」に屋号を変更しています(※3)。
※3 旭食堂として1947年創業、第一旭の看板でラーメン専門店になったのは1956年。他に1953年創業(書籍「京都のラーメンはカルチャーだ。」P126に記載)や1957年創業(書籍「京都ラーメン物語」P100に記載)と記録には誤差がある。
田口有司氏は1944年に開業した隣りの「新福菜館」と関係があったようです。第一旭も新福菜館も同じ近藤製麺、五光醤油を使う点で同じラーメンなのですが、そもそもこの土地所有していたのが田口有司氏です。そのため「新福菜館」に土地貸していたみたいで、その時にラーメンの作り方を覚えたようなのです。(補足:新福菜館は永俤氏が1938年に京都駅で出した屋台ラーメンが発祥)
1947年(昭和22年)旭食堂として開業
1956年(昭和31年)に屋号を「第一旭」に変更
1977年(昭和52年)二代目経営者に元従業員であった佃栄子氏(株式会社たかばし)がなる
2000年頃に三代目経営者が森田孝士(もりたたかし)氏となる。屋号は「本家 第一旭」になる。
2020年頃に四代目経営者が森田孝祐(もりたこうすけ)氏となる(三代目経営者の息子)。
経営者は変わっていますが、土地と建物は田口有司氏の妻・松本春枝氏と息子・松本昭氏に平成元年に引き継がれています。
後に三代目経営者である森田孝士氏の時代になると屋号は「本家 第一旭」となり、二代目経営者(佃氏)の時代にフランチャイズ店を全国展開した時に開業した店舗は公式に「本家 第一旭(本店)」とは無関係となりました。
本家 第一旭たかばし
京都にはかつて「特製ラーメン 第一旭」と書かれた看板のラーメン店がたくさんありました。
いわゆるチェーン店としての「第一旭」のことです。
先ほどの「第一旭」の経営を引き継いだという元従業員「佃栄子氏」の実弟である「佃功氏」が、1986年(昭和61年)に「株式会社第一旭」を設立してチェーン展開を行ったのが始まりです。
会社名はその後「株式会社第二旭」に変更されていますが、1997年(平成9年)5月30日に倒産しました。
その1号店(本家 第一旭 たかばし 寺田店)はフランチャイズ契約が無くなった後に独立採算店となっています。後に移転し「本家 第一旭 たかばし 久津川」になりました。
特製ラーメン 第一旭(チェーンからの独立店)
チェーン展開していた「特製ラーメン 第一旭」の多くは、今は独立採算店として経営を続けている所もあります。
看板や屋号などは変更しないで、そのまま営業されているため、今でも「第一旭」と呼ばれて親しまれています。
・第一旭 熊野店
・特製ラーメン 第一旭 桂店
・特製ラーメン 第一旭 久御山店
・特製ラーメン 第一旭 栄店
・特製ラーメン 第一旭 龍谷大横店
・特製ラーメン 第一旭 槙島店
ただし、一部では先ほどの元チェーン1号店「本家 第一旭 たかばし」の暖簾やロゴを使っている店舗もあります。
・第一旭 大久保店(2018年7月15日閉店 → 先に閉店した羽束師店のテナントへ移転)
・第一旭 羽束師店(2018年4月閉店し、第一旭 大久保店が移転してきて営業)
実質的に、京都の方が考える「特製ラーメン 第一旭」というのは、今でも当時の雰囲気を残している上記の店舗ということになります。
たかばしラーメン
黒い看板に「たかばしラーメン」と書いてあるチェーン店もあります。
これは「のれん分け」された店舗で、ロードサイドやテナントビルに入っているのをよく見かけると思います。
「第一旭」とは名乗っていませんが「たかばし」を屋号に含んでいます。
ちなみに「たかばし」というのは「新福菜館」と「本家 第一旭 本店」がある付近の通称のことです。
二代目経営者・佃氏のフランチャイズ展開時には、第一旭の直営店と言われていた店舗です。その店舗の多くが現在は「クーデションカンパニー株式会社」が経営する「たかばしラーメン」になっています。
・たかばしラーメン 京都南インター店
・たかばしラーメン 京都東インター店
・たかばしラーメン BiVi二条店
・たかばしラーメン 横大路店
・たかばしラーメン イオンモール久御山店
・たかばしラーメン 亀岡店
※たかばしラーメンの紹介は別記事「京都観光必見!伝統的な京都ラーメンを安く並ばず食べるなら「たかばし」がおすすめ」をご覧ください。
総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭
チェーン店の「特製ラーメン 第一旭」に所属していた京都府北部の3店舗と兵庫県丹波市の1店舗は「総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭」という屋号で今でも経営しています。
ロゴや看板にキャラクターはチェーン店とまったく同じままです(キャラクターの名前は「ダイちゃん」)。
・総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭 西舞鶴店
・総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭 福知山店
・総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭 綾部店
・総本家広瀬家 特製ラーメン 第一旭 柏原店(兵庫県丹波市)
この広瀬家の系列店で「格別や」というのがあるのですが、そちらも同じ背脂醤油ラーメンを提供しています。
・格別や 和田山店(兵庫県朝来市)
・格別や 東舞鶴店
・格別や 福知山店
神戸ラーメン第一旭と鳥取と愛知の第一旭
さて、先ほどの「京都たかばし本家 第一旭」の創業者である田口有司氏には息子さんがいました。
実は、田口有司氏は1969年(昭和44年)に松本春枝氏と結婚して松本有司氏となっているのですが、息子さんで「田口隆弘氏」という方が、1971年(昭和46年)に「神戸ラーメン第一旭」を開業しています。
実は3人兄弟で、それぞれが「第一旭」を名乗るラーメン店をオープンしています。
元祖 第一旭(鳥取県米子市)※大森髙男氏(長男)2000年頃に閉店
本店 第一旭(愛知県一宮市)※高山安弘氏(次男)
神戸ラーメン第一旭 ※田口隆弘氏(三男)
※鳥取の「元祖 第一旭」については2024年1月に京都新聞に掲載された記事も参考になります(有料記事)。
※鳥取の「元祖 第一旭」については2023年5月に山陰放送で大森髙男氏にインタビューした記事も参考にしてください。
三男である田口隆弘氏が始めた「神戸ラーメン第一旭」のロゴは独特なものになっており「丸い枠に旭」というマークになっているのが特徴です。
・神戸ラーメン第一旭 三宮本店
・神戸ラーメン第一旭 三宮西店
・神戸ラーメン第一旭 元町本店
・神戸ラーメン第一旭 神戸本店
・神戸ラーメン第一旭 水道筋店
・神戸ラーメン第一旭 新長田店
なお、今回の分類には含めませんでしたが大阪に「神戸ラーメン第一旭」から独立した店舗「第一旭 関目店」というのもあります。
極上ラーメン第一旭(第一旭 六角店)※閉店
地図で検索すると「第一旭 六角店」というのがヒットします(現在は閉店しています)。
京都ロフトの近くにあるお店なので、京都市の方なら一度くらいはお店を見ていると思います。
実はこれ「極上ラーメン第一旭」というのが正確な屋号で、ロゴ自体は「神戸ラーメン第一旭」とほぼ同じものです。
よって、このお店は「元祖 第一旭の流れをくむ店舗」ではなく、「神戸ラーメン第一旭」の流れをくむ店舗であるのは一目瞭然です。
しかし、現在の「神戸ラーメン第一旭」の公式サイトには掲載されていないため、独立採算店になっていると思われます。
まとめ
今回の「京都ラーメンブログ」は、京都でも一番有名なラーメン店「第一旭」についてまとめてみました。
実は、これらのことは過去2回の記事で詳細に書いているのですが、詳細すぎて分かりづらいというご意見もあったため、今回は分かりやすくまとめてみました。