今回は「京都ラーメンの南北問題」について書いてみます。
2024年8月6日に投稿した「京都ラーメンの源流・定番・定義とはなにかについて」の記事の中で少し触れた内容を新しく書き起こした記事です。
京都市内限定で書きますが京都ラーメンとされるものの定義は京都民とそれ以外の方では大きく異なるというのが筆者の見解です。
京都以外の方であれば全国展開しているチェーン系「天下一品」が京都発祥として知られています。また、50歳以上の方であれば同じく全国展開していた京風ラーメン「京都あかさたな」のような和風ラーメンを思い出す方もいると思います。
京都あかさたなは昭和51年に京都四条河原町にもあった甘味とセットで注文できる京都をイメージした薄口のスープで食べるラーメンでした。昭和54年から全国FC展開したことで京都ラーメンブームを起こしたお店です。
天下一品は真逆の濃厚な味わいでドロっとしたスープのラーメンです。スープは飲むよりも食べると言ったほうが良いものです。
しかし、どちらも京都で見かけるラーメンの代表格とは言えません。
京風ラーメンは観光地などにありますが少数です。天下一品でイメージする「こってり」ラーメンは有名で京都の人もよく食べますが天下一品でしか食べられないラーメンです。中には天下一品のラーメンはラーメンではなく「天下一品という食べ物」と称する方もいるほど京都では独特のラーメンになります。
実は京都で見かけるラーメンは大きく2系統あります。
ひとつが「豚骨醤油ラーメン」で、もうひとつが「背脂醤油ラーメン」です。
そしてこの両者のラーメンは京都を南北に分布が分かれるのです。
京都市の南では豚骨醤油ラーメン店が主流で人気があります(豚骨ではなく豚肉で出汁をとる店もあります)。
程よい豚臭さを持つ中大貫と呼ばれる2回出産した雌豚を利用することが多いですが、豚骨スープをベースにした醤油ラーメンです。有名な「本家 第一旭」では豚骨(ゲンコツ)を使って出汁をとっています。
京都ラーメンの特徴としてよく言われる「味が濃い」というよりも「旨味が濃い」と表現するほうが適切なスープで、醤油ダレも濃くはなく出汁の旨味を味わうラーメンと言えます。強烈な獣臭が特徴的です。
お店の例としては「本家 第一旭・特製ラーメン 第一旭・たかばしラーメン・ラーメン藤・ラーメン大栄・元祖らーめん大栄」など。これは一部で他にも似たラーメン店が京都市南部には多くあります(ラーメン藤は豚モモ肉と背脂で出汁をとっています)。
麺や醤油ダレは「近藤製麺工場(近藤食品)」のものを使うお店が多く、前述した「ラーメン藤」は近藤製麺工場の直営ラーメン店です。有名で京都市南部の代表格のラーメン店が「第一旭」なので「アキラ系(旭をアキラと読む)」と呼ばれることもあります。
詳しくは筆者別記事「第一旭(京都ラーメン)系統の違い まとめ」を参照してください。
京都市の北では背脂醤油ラーメン店が主流で人気があります。
ベースは鶏ガラで、豚の背脂が多めに浮かんでいるのが大きな特徴のラーメンで「背脂チャッチャ系」と呼ばれることもあります。
背脂醤油ラーメンも「味が濃い」というよりも「旨味が濃い」と表現するほうが適切なスープで、醤油ダレも濃くはなく出汁の旨味を味わうラーメンです。こちらも強烈な獣臭が特徴的です。
お店の例としては「ますたに・ほそかわ・来来亭・魁力屋(かいりきや)」など。これは一部で他にも似たラーメン店が京都市北部には多くあり「ますたに」で修業した方が独立開業した事例が目立ちます。
詳しくは筆者別記事「ますたに 北白川本店 – 銀閣寺道 / 京都ラーメンの歴史」を参照してください。
このように、京都ラーメンは大まかに見ると北が鶏出汁で南が豚出汁という構図になっているのです。狭い京都市内の南北でスープが分かれているというのが今回の記事のメインテーマです。
北も南も強烈な獣臭が特徴的で、味が濃いというよりも旨味が濃いラーメンです。ちなみに京都の玄関口「京都駅」周辺は南なので豚骨醤油ラーメンが主流になります。
もちろん京都には他にもラーメンがたくさんありますが、元祖京都系と呼ばれる京都市南部の豚骨醤油ラーメンと第二の京都系と呼ばれる京都市北部の背脂醤油ラーメンが京都ラーメンの歴史の中では二大巨頭となっている「京都ラーメン」なのです。