今回の「京都案内」は京都の松茸についてです。松茸といえば秋の味覚、京都の松茸といえば「丹波産」ですが、かつては「洛北松茸(京北松茸)」という呼ばれ方をしていたように、京北などでも松茸はたくさん採れていた時代もありました。
しかし、ある理由で京都では松茸が作られなくなってきます。
その理由とは?
京都の松茸といえば「丹波松茸」
今回の「京都案内」は、京都の松茸の話です。
秋になると、彼岸花・コスモス・金木犀などの色彩豊かな花たちが姿をあらわしますが、ちょうど金木犀が香ってくると・・・・
マツタケの季節です。
だいたい、9月中旬~10月の風物詩ですが、京都の松茸といえば「丹波松茸(丹波産マツタケ)」くらいしか聞きません。
しかし、かつては「洛北松茸」というのも存在していたのです。
とり市老舗「洛北松茸」という看板
寺町通の本能寺近くに「とり市老舗」さんという京都の特産品を扱う古いお店があります。
「竹の子(洛西)、賀茂なす(上賀茂)、松茸、千枚漬、佃煮」など、いろいろな商品を扱っており、9月下旬くらいには松茸が店頭に並んでいます。
実は、ここの看板なのですが、よくよく見ると「日本一 京の味覚 洛北松茸」という看板があるのです。
洛北松茸?
洛北とは「京都市北区の上賀茂神社がある一帯」くらいの意味なのですが、京都市の北大路通より北は洛北で通用します。
しかし、「とり市老舗」さんで扱っているのは岩手県(岩泉産)など国内・関西のマツタケだし、昨今「洛北松茸」なんてものは聞いたことも見たこともありません。
どこにあるのでしょうか?
実は、かつては「京北」などで大量の松茸が採れていた時代もあったのです。
40年ほど前には京都でも松茸が大量に採れていた
松茸といえば「お高いもの」ですが、実は昨今の松茸は昔よりもっと高くなってきているのです。
というのも、松茸が採れなくなっているからで、年々高くなっている印象があります。
ちなみに、「ころ」と呼ばれるお吸い物なんかで使う先の丸い若いマツタケが一番高く、香りがよく松茸ご飯で使うような傘の開いた「開き」になると安くなります。
ひと山1~3本くらい、産地は様々ですが、安くて5000円(外国産)、国内産だと安くても15000円程度。
国産で初物とかだと3万円くらいというのが今年の相場観です。
しかし、かつては京都市の北部でも松茸が大量に採れていた時代もありました。
だいたい40年くらい前、京北でも「赤松」の林はあって、毎年秋の頃には段ボール箱いっぱいの松茸が京北から街中に搬入されて販売されていた時代もあったのです。
でも、今は丹波産くらいしか京都では見かけません。
なぜなのでしょうか?
京都でマツタケが採れなくなった理由
京都の洛北で松茸が採れなくなった理由は、戦後の「近代数奇屋建築ブーム」で北山杉の需要が多くなってきてからのことです。
北山杉の需要が多くなってくると、当然ですが生産者は北山杉を山林で育てようとするわけです。
そのため、赤松の自然林だったところにも杉が育てられるようになり、結果として松茸が採れなくなってしまったのです。
京都の松茸採取は入札制
さて、これは補足程度の話なのですが・・・・
今回の件で、実際に現場の人にインタビューしていると、こんな声も聞こえました。
「京都の松茸採取は入札制だから毎年採れるとは限らない」
これ実は京都府の陋習とも言える制度なのですが、京都の北部では山の権利者がマツタケ採取権を入札で販売するという慣行が多く存在していたのです。
マツタケというのは赤松の自然林でしか採れず、かつ山林整備をしてマツタケが育つ環境を整えていかなければなりません。
入札者がマツタケの発生環境を整備しても、次の入札でも権利を得ることができるのか分からないわけです。
京都の山林が入札制であったことも、京都産の松茸が廃れていった要因だと言われています。
京都の松茸 まとめ
さて「京都の松茸」とえば「丹波産」くらいしか聞きませんが、かつては京北などでも松茸は大量に採れた時代もありました。
その松茸は「洛北松茸(京北松茸)」として親しまれていました。
しかし、北山杉のブームがあった頃から、赤松のあった山にも杉が植えられるようになって、京都の山といえば杉だらけになってしまって、京都産のマツタケは丹波産のものしか見なくなってしまいます。
ちなみに、イベントで「松茸ご飯」が売られていたので(1000円)食べてみましたが、香りの良い、ちょっと苦みのある松茸らしい味わいでした。
今ではイベントなどで、京北の山で採れた天然ものを見物できるくらいです。(千本三条の高級料亭で驚くほどの値段で食べられるという噂もあります)
「洛北松茸(京北松茸)」は、こういったイベントでもないともう見ることすらできない希少な松茸なのです。
そういったことを問題視しているのか、最近では岩倉などで京都の松茸を復興しようという動きも出てきてはいますが、そういった取り組みはまだ始まったばかりで、今後も京都の松茸を多く見るという機会はしばらく訪れそうにはありません。