今回は関東と関西で異なる「雑煮と餅」についての話です。正月に食べられる餅ですが「関東=角餅、関西=丸餅」という地域の違いがあります。また雑煮も「関東=すまし汁、関西=白味噌汁」という大きな違いがあります。
今回は「餅、雑煮、花びら餅、くずもち、桜餅、わらび餅、汁粉」における関東と関西の違いを見ていきましょう。
餅:関東は切り餅、関西は丸餅
関西 → 丸餅
関東では四角い角餅が普通ですが、関西では昔から丸い丸餅が食べられて来ました。
関西では、正月になると雑煮で使う丸餅や鏡餅を買い求める方が多く、餅といえば「丸い」ものと考える方の方が多いと思います。
関西では、商店街などにある昔ながらの餅屋さんで丸餅が売られています。
スーパーなどでは「サトウの切り餅(角餅)」ならぬ「サトウの丸餅」が売られていたりもします。
ただ、最近ではスーパーで見るのは「サトウの切り餅」なので、丸餅は年末頃から正月にかけて売られる季節商品です。普段から丸餅ばかり食べているわけでもありません。
雑煮:関東は焼き餅&すまし汁、関西は煮た餅&白味噌仕立て
関西 → 煮た餅&白味噌仕立て
また、雑煮にする場合は関西では「煮た丸餅」を使うのが一般的で、関東のように「焼いた角餅」は使われません。
雑煮自体にも違いがあって、関西では「白味噌仕立て」、関東では「すまし汁」が使われるなど地域によって雑煮の様相は大きく異なります。
関東と関西で大きく分けましたが、都道府県・地域によって雑煮は出汁から異なります。
雑煮は京都が発祥で、室町時代に誕生しました。
江戸時代に関東へ伝わり、そこから参勤交代によって全国各地に雑煮が広がっていきます。
そのため、雑煮は「地産地消」で作られるようになり、今のように日本全国で様々な雑煮が生まれたのです。
花びら餅:関東は餅、関西は求肥
関西 → 求肥を使う
京都では正月になると「花びら餅」が縁起物・おせち料理として食べられてきました。
元は「宮中おせち料理」が発祥で、今は新春を祝う食べ物として親しまれています。
関西で花びら餅といえば「白味噌餡にゴボウの砂糖漬けをのせ求肥(ぎゅうひ)で包んだもの」ですが、関東では求肥ではなく餅を使うのが一般的です。
くずもち:関東は久寿餅、関西は葛餅
関西 → 本葛のでんぷん(吉野葛)を使う
関西で「葛餅」と言えば「本葛(くず)のでんぷん」を使う和菓子です。
半透明の食べ物で、きな粉や黒蜜をかけて食べられています。
関東の「葛餅」は江戸時代後期に「小麦でんぷんを使う」ものが作られるようになった乳白色の和菓子です。関西のものとは別の食べ物で、名称の混在を避けるために「久寿餅」と呼ばれるようになりました。
桜餅:関東は小麦でんぷん、関西は餅
関西 → 餅を使う
桜餅は桜の葉で餅を包んだ和菓子です。
関西では蒸した餅米を干した「道明寺餅」という粒感のある餅が使われ、それに塩漬けの桜の葉を巻きます。
関東では小麦でんぷんで作った餅で餡を包みます。それに塩漬けの桜の葉を巻いた和菓子のことを言います。
わらび餅:関東と関西で違いはない
関西 → わらび粉を使う
関東と関西で違いがないのが「わらび餅」です。
きな粉や黒蜜をかけて食べる半透明の和菓子ですが、京都の昔ながらのお店では餡が中に入っている場合もあります。
本来は蕨(わらび)の茎から作るデンプンで作られるものですが、安価なさつま芋のデンプンで代用することがあります。
わらび粉は吉野葛と同じ奈良県の特産物で、奈良や京都で「わらび餅」といえば本物のわらび粉が使われたものを意味することがほとんどです。
汁粉:関東はしるこ 関西はぜんざい
関西 → ぜんざい(つぶした粒餡の汁を使う)
関西 → 亀山&小倉(汁気がない粒あんを使う)
汁粉(しるこ)はこし餡の汁に白玉餅などを浮かべた食べ物です。
関東と関西で汁粉の違いはありませんが、関西では似た食べ物として「ぜんざい」と「亀山(小倉)」と呼ばれるものがあります。
つぶした粒餡の汁を使うと「ぜんざい」となり、粒あん(汁気なし)を使うと「亀山(小倉)」となります。
まとめ
このように、お餅だけでも関東と関西で細かい違いがあります。
雑煮も都道府県で材料が異なる食べ物です。
食べ物は発祥の地から各地へ伝わるのが常ですが、今のように同じ材料が入手しやすかったわけではなく「地産地消」の食材で作られることが多かったからです。
そのため、似たような食べ物でも材料が異なる場合があるのです。
また、同じ名称でも別の食べ物が関東と関西に存在する「くず餅」のような事例もあります。
最近ではテレビでこういった違いが取り上げられ「えぇぇっ!」みたいな風潮がありますが、食文化の世界では土地が違えば食べ物が違うというのは当たり前の話なのです。