今回の「京都の食材」ネタは、京都というか関西の「鴨なんば」についてです。関東では「鴨南蛮」と言いますが、関西と関東で呼び名が異なるのは、とある食材の違いがあるからです。では、鴨なんば と 鴨南蛮 の違いとはなんの食材が違うというのでしょうか。
実は「ネギ」の違いなのです。
大阪では鴨南蛮のことを「鴨なんば」と呼ぶ
上の写真、これはなにかと問われれば多くの方がこう言うはずです。
「鴨南蛮」
そう、これは蕎麦・うどんの店でよく見かける「鴨南蛮」です。
しかし、これ大阪では別の名前で呼ばれています。
では何と呼ばれているのでしょうか・・・・
実は「鴨なんば」
と大阪では呼ばれるのです(京都でもそう呼びます)。
鴨なんば と 鴨南蛮 の違いは?
鴨南蛮というのは「鴨肉とネギ」を使ったうどんのことです。
「鴨=鴨肉」そして「南蛮=ねぎ」のことです。
江戸時代に日本へ来ていた西洋人が好んで食べていたのが玉ねぎの代用としての「ネギ」だったことからネギのことを南蛮と呼ぶようになったのだそうです。
では「鴨なんば」は「なんば=ねぎ」なのでしょうか?
実はその通りで「なんば=ねぎ」のことです。
大阪の「難波ねぎ」は、今では幻の野菜とも言われますが「伝統野菜」として古くから栽培されていた野菜です。
明治時代の頃まで、大阪の難波は広大なネギ畑だったのです。
このネギが京都に持ち込まれて「九条ねぎ」となり、関東にも広がっていったのであり、ネギは大阪・難波がルーツだとされています(難波ねぎについてはこちらの記事が詳しいです)。
だから「なんば」といえば、大阪ではネギのことなんです。
ということは・・・・
関東では「鴨南蛮」の「南蛮」は「ねぎ」のことだから「鴨南蛮」と呼ぶ。
関西では「鴨なんば」の「なんば(難波)」は「ねぎ」のことだから「鴨なんば」と呼ぶ。
関東と関西で「ねぎ」の呼び方が違うから「鴨南蛮」の呼ぶ方も違うのです。
鴨ってなんの肉?
補足ですが「鴨なんば」の鴨とはどんな肉のことを言うのでしょうか。
鴨肉なんだから「鴨」なわけですが、実際にはアヒルと鴨の間の子である「合鴨」の肉が使われます。
ただ、それは本当にこだわっているお店だけで、実際には「鶏肉」が使われていたりします。
故事で「鴨が葱を背負ってくる」という言葉があります。これは「うまいこと」が重なり好都合であるという意味なのですが「鴨鍋」といえば「ネギ」が合う食材だとされてきました。
昔から「鴨肉とネギ」は美味しいものだったのです。
関西ではなぜ鶏のことを「かしわ」と言うのか?
ちなみに、関西では鶏のことを「かしわ」と言うのは昔の名残です。
「かしわ」というのは漢字で「黄鶏」なのですが、黄色い鶏(茶色い鶏)のことを意味する言葉で、その色は「柏の葉」の色(茶色)が語源です。
肉は植物(色)で表現されるのはご存知だと思いますが「かしわ」というのも同じ話なのです。
もみじ = 鹿
さくら = 馬
かしわ = 鶏(黄鶏)
単に、関東ではこの昔ながらの呼び方が廃れていっただけで、昔は「かしわ=鶏肉」のことだったのです。
ちなみに、京都では「とり」というと野生の鳥(鴨など)のことを言う言葉で、鶏肉は同じく「かしわ」と呼ばれています。
鴨なんば と 鴨南蛮 は同じ
というのことで「鴨なんば と 鴨南蛮」は同じ意味で「鴨肉とネギ」のことを言います。
ただし、語源が違って「鴨なんば」は難波ネギのことで、「鴨南蛮」は南蛮人がよく食べていたネギのこと言います。
大阪では「なんば」といえばネギのことで、鴨とネギを使ったうどんは「鴨なんば」と呼ばれてきたのです。