今回の「京都秘境ハンター」は嵯峨・太秦エリアにある「油掛町」に実在する「油を掛けてお参りする油掛地蔵(油かけ地蔵)」を見に行ってきました。地蔵となっていますが、正確には「阿弥陀如来坐像」のことで、鎌倉時代に造立(ぞうりゅう)されたものです。
江戸時代には「油を掛ける」風習があって、油商人がお参りしていたことから油掛地蔵(油かけ地蔵)と呼ばれるようになりました。
京都秘境ハンター
今回の「京都秘境ハンター」は、油を掛けてお参りをする珍しい地蔵を見に行きました。
京都の嵯峨天龍寺油掛町という所にあり、我々はいつも前を通るので・・・・
編集 「これはこれは有名なお地蔵さんに違いありませんね(キリッ)」
とか思っていたのですが、調べてみると「てんで有名でもない」上に「地蔵でもなかった」というお地蔵さんです。
名前を「油掛地蔵(あぶらかけじぞう)」と言います。
油掛町にある油掛地蔵
京都の嵯峨天龍寺油掛町の四辻にはかつて街道であったことが分かる昔の案内標識(石碑)が残っています。
そこにあるのが「油掛地蔵(あぶらかけじぞう)」で、古くから油をかけてお参りするという習わしのある珍しいお地蔵さんとして地元の方に親しまれてきました。
この街道沿いで、江戸時代に油を売り歩いていた油商人が「商売祈願」などを願ったのが始まりと言われます。
地蔵堂の中には、長年油をかけられて見た目もちょっとアレなお地蔵さんが安置されています。
実際に油を掛けることができるので、さっそく実行してみることにしました。
もちろん!お願いごとだってしちゃうんだからね!
実は地蔵ではない?
さて、この「油掛地蔵」なのですが、額には「大日如来坐地蔵尊」と書かれています。
京都の町中で普通に見る「お地蔵さん」みたいなビジュアルではないことは前々から言われており、「油掛地蔵とは呼ばれるけど大日如来に思える」ということで「大日如来坐地蔵尊」という表記になっているのです。
しかし、長年「たぶん大日如来」と思われていたのですが、昭和53年(1978年)の調査では「阿弥陀如来坐像」だったことが判明します。
江戸時代には、油商人がこの前を通る際には必ず油を掛けていたという記録が残っているのですが、それよりももっと以前の1310年(延慶3年)に平重行という人物(鎌倉時代に仏像の修理などをしていた信者)によって安置されたものであることが判明しています。
つまり・・・・
地蔵だと言われていたけど「大日如来」だと地元では思ってましたからの(調査で)「阿弥陀如来」だと判明。
という経緯になっています。
ちなみに「大日如来=真言宗」で「阿弥陀如来=浄土宗、浄土真宗」です。
大日如来(真言宗)
阿弥陀如来(浄土宗、浄土真宗)
でも、実は地蔵?
さて、かなりヤヤコシイ話なのですが、うちの困ったちゃん温泉担当は重たい口を僅かに動かしてこう言ったのです。
温泉担当 「如来も地蔵も同じようなもんなんだなっ!ダナッ!(っ’﹏’c)」
これはどういうことなのでしょうか?
実は「如来」と「地蔵」の違いは、悟りを開いているかいないかの違いです。
そこらへんでよく見かけるお地蔵さんというのは「地蔵菩薩」のことで、悟りを開いていない(ちょっとランク下)のことを指すわけです。
如来:悟りを開いている
菩薩:悟りを開いていない
そのため、この「油掛地蔵」を紹介しているネット記事なんかでは「実はお地蔵さまではなく阿弥陀如来座像」と紹介しているところもあるのですが、知らない方には誤解を招くので上記のような解説が必要でしょう。
ということで「地蔵ではなく阿弥陀如来」というと全く別のものと思われてしまうのですが、根本的には同じものなのです。
油掛地蔵 場所
さて、この「油掛地蔵」の場所ですが、右京区嵯峨天龍寺油掛町の四辻にあります。
このあたりは「秦氏」が勢力を持っていた太秦・嵯峨エリアです、この油掛地蔵が造立(ぞうりゅう)されるよりもっとまえ3世紀頃に日本にやってきたとされる氏族です。
9世紀後半には一大勢力をもった氏族で、今の中国から朝鮮半島を経由し、九州から近畿エリアに流通網を持っていました。
教科書的には「渡来人・帰化人」と言われることのある秦氏ですが、京都の太秦に流れ着いてきたのではなく、平安時代に中国から京都までのエリアに住んでいた一族です。
当時は、この流通網を利用して「奴隷・物資・文書」などがやり取りされていたわけです。
これだけの巨大なルートを持つ氏族ですから、鎌倉時代には東国まで進出していたと考えても良いでしょう。
この「油掛地蔵」の四辻も物流の流れ道であったに間違いなく、その安全を地蔵に祈願していたのです。
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺油掛町30
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