司(つかさ)は屋号の前に付いている「菓子司」や「御用司」といった言葉のことです。京都ではよく見かける言葉で、9/27放送の『林先生が驚く初耳学!』で、この謎を扱うそうです。
しかし、予告では「司と付く菓子司にしか許されていないこととは?」とありました。これはかなり意味不明な疑問ではあります。
初耳学 9/27
『林先生が驚く初耳学!』の9/27回は2時間SPです。その中で京都など(特に地方)に残る「○○司」と屋号につく言葉の不思議を扱うそうです。
予告では司と付く菓子司にしか許されていないことは? とありました。
「司」(つかさ)は屋号の前に付いている「菓子司」や「御用司」といった言葉のことです。
しかし、我々にはこの予告の意味するところがわかりませんでした。
なぜなら、人形司や菓子司などのように「司」(つかさ)と付くのは、専門職ですよの意味合いでしか使わないからです。
京都でよく見る司
京都を歩いていると、東京ではあまり見ない「○○司」と看板に書かれているところが比較的多いように思います。
人形司(京人形司)
菓子司(京菓子司)
御菓子司(京御菓子司)
櫛司(くしつかさ)
彫刻司
京都には創業540年という「御用蕎麦司 本家 尾張屋」さんというお蕎麦屋さんがあります。
こちらは江戸時代後期に「御用蕎麦司」として宮中(御所)に出入りを許されたお店です。
京都ではこういう超老舗が多いので「○○司」というと「宮中御用達」というイメージが強くあります。しかし、あくまでも「御用」という部分が宮中御用達をイメージする言葉で、「司」は「○○屋」さんの意味です。
京都府京都市中京区仁王門突抜町322
営業時間:11時~19時
定休日:正月(1/1~1/2)
URL:http://honke-owariya.co.jp/
職能としての司
『司』(つかさ)は「つかさどる」ということなので、イメージとして宮中御用達のように思えますが、実際の意味としては「○○司=○○する人」のことです。
たとえば、「司書」とは今でも使いますが、図書館にいる専門職のことです。
職業として行う人は「プロ」であり「専門家」です。
「○○司 = ○○を専門とする人」
くらいの意味で使われるのが、本来の意味なのです。
しかし、律令制のもとでは今でいう「役所」や「役人」的な意味合いで使われているため、『司』を公的な意味だと思われているようです。
司の起源
『司』(つかさ)というのは中国から入ってきた言葉で、今と同じように「する人」とか「する場所」の意味合いです。
今の中華人民共和国(中国)でも使われている言葉です。
中国では「国務院」という行政機関(国家機構)があり(日本の内閣)、そこで業務を行う「国務院弁公庁」が設置されていて、さらにその中に「職能司」という専門家の集団(日本の庁)があります。
国務院 (日本の内閣)
国務院弁公庁 (国務院の業務を行う部署)
職能司 (日本の庁)
中国でも『司』(つかさ)は専門的な職能集団の意味で使われており、その中国から入ってきた言葉が『司』(つかさ)なのです。
司のイメージ
『司』(つかさ)というのは「宮中に仕えるものの職位」とか「国家公務員」のことですと説明している場合もありますが、必ずしもそうではありません。
宮中御用達 ≠ 司(ノットイコール)
○○屋さん ≒ 司(ニアリーイコール)
しかし「高貴なイメージがあるから」という理由で屋号に『司』を含めるお店の方が多いのが実態です。
『司』は、もともと中国からはいってきた言葉で、日本では平安時代に律令制度が行われた時代から使われています。
そのため、宮中や役所などで使われていたのは真実ですが、その時代から「職員」の意味合いで使われています。
たとえば「家司」(けいし)というのは律令制のもとでは親王家で庶務を行う職員のことです。
前述した「○○司 = ○○を専門とする人」の意味なのです。
司は宮中御用達という意味ではない
江戸時代でも「御用司」(ごようつかさ)というのがあり、京都では御所(宮中)に出入りを許されたお店の意味で使われています。
しかし、前述したように「御用」の部分が宮中御用達の意味であって、『司』は職業的な意味合いです。
しかし、「御用」がついたら必ず「宮中御用達」かといえばそうでもありません。
京都以外でも「御用司」はあり、役所や藩から注文を受けていたお店も「御用司」を名乗っているのも、また事実です。
つまり、宮中御用達でなくても「御用司」は名乗ることができます。
実際には「司 = 宮中御用達」というイメージがあることから、イメージ戦略として「○○司」を名乗るお店も多いというのが実態です。
昭和時代の創業なのに屋号に「菓子司」とつくところはかなりあります。
昔から藩にモノを納めるお店は多く、宮中にモノを納める藩も多くありました。近代でも宮中に伝統工芸を納めたり、天皇行脚の時に天皇家が買って食べたというだけで「宮中御用達」を名乗ることもあります。
「司 = 宮中御用達」はイメージ戦略の一環くらいに考えておくのが無難です。
京菓子司 柏屋光貞
江戸時代からある「京菓子司 柏屋光貞」さんは、1806年創業の老舗で、当時は宮中の「大膳部」(だいぜんぶ)という食事を司る場所「膳所」(かしわどころ)に出入りしていました。
当然、宮中御用達です。
「京菓子司 柏屋光貞」さんのように宮中御用達のお店もありますが、店名には書かれておらず「京菓子補」とのみ書かれています。単純に「お菓子屋さん」とだけ名乗っているわけです。
ちなみに「行者餅」(ぎょうじゃもち)を扱うお店で、これは祇園祭のある1日のみしか販売されません。味噌の餡が入った山椒の香りのする和製クレープのようなお菓子です。
京都府京都市東山区毘沙門町33−2
司と付く菓子司にしか許されていないこととは?
「司」と書かれた京菓子屋にだけ許されたことがある!?
御菓子屋は公家などの依頼でお菓子をつくることが許されたことがあったそうです。
食材で使えるものがあるそうで「高級+風味がない」食材を使うことが許されているとのことです。その食材とは・・・・白い砂糖とのことです。
へぇぇえ!!!
昔の話かいっ!(笑)