今回の「京都秘境ハンター」は、京都の山奥にある珍木「北山台杉」を見に行って来ました。北山杉は山へ行けば無数に見られますが「北山台杉」が見られる場所はなかなかありません。では、この北山杉ならぬ「北山台杉」とはいったいどのような杉なのでしょうか。
ということで、今回も「京都秘境ハンター 北山杉編」始まります!
600年の歴史ある「北山杉」を見に木造倉庫群まで行って来ました
今回の「京都秘境ハンター」は、600年の歴史ある「北山杉」を見に山奥の「中川地区(北区)」まで行って来ました。
北山杉は床の間の装飾された床柱(とこばしら)などに使われる高級木材で、京都の伝統工芸品でもあります(価格は1本10万円~20万円)。
室町時代の初期(応永年間、1390年頃)から京都で生産されており、茶の湯文化が盛んだった頃には茶室に使われるなどしました。
・数奇屋造り(化粧垂木に使用)
ということで、北山杉の里「北山中川地区」へとわざわざやってきたわけです。
北山杉というくらいなので、京都市北区の北部「北山エリア」に生産地が集中しており、5つの地区「大森、真弓、杉坂、小野、中川」で今でも60軒ほどの生産業者によって生産されています。
特に「中川地区」は生産業者の半数がある最大エリアです。
上の写真は、中川地区にある「木造倉庫群」で昭和10年頃に建てられた丸太の生産・乾燥・保存のための工場です。
3階建てのように見えて、実は4階建て(中2階がある)という独特な構造を持っています。
京都でも、こんな風景が見られるのは「中川地区」くらいで、まさに京都秘境ハンターにふさわしい土地・・・・だと思ったのですが!
・真弓地区
・杉坂地区
・小野地区
・中川地区
北山杉、なにが珍しいの?
ということで「北山杉を見られて良かったね!」という話なのですが、ここで大問題が発生しました。
そう・・・・この記事がとても面白くないのです(笑)
そもそも、京都で「杉」は珍しいものでもなく、そこらへん・・・・いや家の近くの山にも植林されているものです。
戦後「近代数奇屋建築ブーム」が起こり、北山杉の需要が多くなった時期があったのですが、その時に京都の山の木はほとんどが杉にとって変わったのです。
京都で松茸が獲れなくなったのは「北山杉ブーム」があったからという話を以前したことがありますが、京都の山は杉の木を植林することで、他の植物が消え(松茸も消え)て、山の見た目の高さまで変わるという事態になっているのが今の姿なのです。
いくら身近な秘境を見に行くのが「京都秘境ハンター」の主旨とはいえ、そんな身近なものを紹介するわけにはいきません!
なら「北山台杉」を見に行こうじゃないか
そこで、今回の企画を考えた温泉担当に小一時間問いただしてみたところ、彼は普段から重たい口をさらに静かにゆっくりと動かしてこう言ったのです。
温泉担当 「じゃぁ、北山台杉を見にいくのらぁぁぁぁ~٩( ‘ω’ )و」
北山台杉?
そう、北山杉には「北山台杉」という種類があって、これはそうそう滅多に見られないものだと言うのです。
おや?なんか面白くなって来てますか?
北山台杉と北山杉の違いは?
では「北山台杉」とは、いったい何なのでしょうか?
百聞は一見に如かず、上の写真を見ていただければ、一本の杉から複数の杉が生えている珍妙な姿の木であることが分かると思います。
これ、こういう植物なのでしょうか?
いえ、これは北山杉を伐採した際に特殊な手入れをすると、残した株から新しい芽が何本も出てくるから、このような姿になるのです。
北山台杉は4つの構造になっていて、一番下が「株」。
そこから新しい芽が出て「取り木」になるのですが、一本だけ枝が育つようにして「立ち木」を作るのです。
こうすることで、新しく植林せずとも半永久的に木材を生産できるという京都・北山だけの特殊な育成方法です。
一般的な北山杉との大きな違いは、北山杉が「一本杉で丸太を生産する」のに対して、この北山台杉は「枝をまっすぐ育てて細い丸太を生産する」という点です。
北山杉は見たことがある方は多いと思いますが、この「北山台杉」は遠目ではなかなかわかりませんので、ご存じない方も多いことでしょう。
では、この北山台杉はどこで見られるのでしょうか?
・北山台杉(まっすぐ育てた枝で化粧垂木などに使う)
北山杉の見物スポット
実は北山台杉が身近で見られる場所が2ヵ所ほどあります。
京北と杉坂です。
もうひとつ、すべての北山杉のルーツになったという杉が中川八幡宮にあります。
・杉坂口(北山台杉)
・京北(北山台杉)
北山杉のルーツがある中川八幡宮
中川地区にある「木造倉庫群」の少し北に「中川八幡宮」という神社があります。
ここが「北山杉」の故郷で、ここにすべての北山杉のルーツとなった大杉があります(高さ30メートル)。
前述のように「応永年間(1390年頃)」と600年前には作られており、天文9年(1540年)には皇室の御用木としても使われてきました。
境内には北山杉の母樹とされる樹齢約600年の御神木(北山杉はこのご神木から挿し木をとったのが最初とされる)、さらに皇太子・皇太子妃殿下が下行された際の記念碑などが建てられています。
杉坂口の北山台杉
京都市北区の杉坂口(国道162号)から府道31号線を「真弓、杉坂」方面に曲がるとすぐにあるのが「杉坂口の北山台杉」です。
岩井林業さんが樹齢200年~400年の北山台杉を、ここに植林して保存しており、道沿いから見ることができます。
京北の北山台杉
京北の弓削川沿いに北山台杉を身近に見られるスポットがあります。
北山台杉は「観賞用の庭木」としても使われており、このように植えられている場合もあります。
京都の北山台杉 まとめ
ということで、今回の「京都秘境ハンター」は北山台杉を見に行って来ました。
なかなか見ることができないというか、存在することを認知するのが難しい北山杉の一種です。
見てみると、大きな北山杉から細い杉(枝)が真っ直ぐと伸びているのが特徴的です。
この北山台杉、もし近くまで行くことがあれば一度見ておくと良いかもしれません。
・杉の株から枝をまっすぐ育てて使う
・一般的な北山杉は北山一本杉のこと(茶室の床柱などに使う)
・北山杉は京都の伝統工芸品で600年前(室町時代)からある
・京都市北区「北山」の杉だから北山杉
・北山の「大森、真弓、杉坂、小野、中川」で生産される
・最大の産地は「中川」
・中川には昭和10年頃に建てられた材木商の建物「木造倉庫群」がある
・中川地区の中川八幡宮に北山杉のルーツがある
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